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―――side A―――


甘い香。
春の風。
一面の草原。
眩しさに目を細める先。
金色の光を背にした

アナタがいた。



   ◇◇◇

「だ〜か〜ら〜、なんでアンタはいつもそうなのよ!?」
思わず受話器に向かって怒鳴っていた。
隣りで小さい溜め息が聞こえたので慌てて苦笑いを返す。お客さんも苦笑。ばっちゃんは気にせず整備を続けている。
『悪かったって、謝るから。機械鎧直しに出張整備頼めるか?』
「……エド、アンタ全然悪いと思ってないでしょ」
『思ってるって、この通り! キャラメルタルト奢ってやるから』
「本当!?……って、誰が食べ物に釣られるかっ」
釣られそうになるも必死に抵抗。結果的には出張整備に行くと決定はしているものの、一度は抵抗しておかないと軽く見られてばんばん機械鎧を壊されかねない。
『頼むウィンリィ』
「仕方ない。行ってあげるから場所は?」
そんなこんなで結局はいつものパターン。
私は鞄に工具を詰めて駅に向かう。汽車に揺られ機械鎧を直しに行くのだ。
流れる景色を眺めながらつくづくお人好しだと思う。
幼馴染みとして、整備士として。
私はアイツの面倒を見てやらなきゃならない。
でなきゃ何時まで立っても子供のままで、機械鎧に対して愛情を持たないだろう。自分の身体なんだからもっと大事に使いなさいと怒ってやらねば。それと、もっと牛乳を飲ませなければほんとーに子供のまま成長期を終えてしまうではないか、と思うのだ。
ってゆうか、本気で身長伸ばしたいならそれなりの努力をしろ努力を。



「さすがウィンリィだね〜。良かったね、兄さん」
機械鎧を直し終わる。
見ればエドもアルも怪我をして……機械鎧も鎧も傷だらけだ。
「エド……やっぱり牛乳飲みなさい」
「なんで!?」
「何してこうなるか知らないけど、どうせエドの事だから先に手がでてこうなってアルも巻き込まれるんでしょ? イライラしてすぐ手が出たりするのはカルシウムが不足しているのよ。カルシウムといえば牛乳が一番手っ取り早いの。身長も伸びるし」
「誰があんな牛から分泌された…」
「でもシチューは好きよね? おかしくない? 牛乳よ? 味なの? 塩でも砂糖でもいれて飲めばいいじゃない。それに生クリームとかどうなのよ?」
「だーー!! うるさい! 飲まないったら飲まない!!」
エドは素早く服を来て部屋からでていってしまった。
「全く……子供なんだから」
「あはは〜。ほんとだね」
「“あはは〜”じゃない。アル、ほらコレ」
私は鞄の中からオイル缶を取り出す。
「徹底的に磨いてあげるから覚悟しなさい」


久しぶりに会ったかと思うといつもこんな感じで。
慌ただしく過ぎて互いにゆっくり話す時間なんてないのが実状。今度会った時には…とか思ってもいざその時になると忘れてしまう。
いつものやり取り。それで終わり。
夕方なってエドが戻って来た。
「駅まで送る」
そう言って私の鞄を持ち上げた。
「あ、ちょっと寄りたい所があるんだけど」
折角リゼンブールから出てきたんだ。買い物して帰ろう。
エドは溜め息を付きながら了承してくれた。それもいつものパターン。
エドとアルと三人でお店を回る。エドはいつも文句ばかり、アルは笑いながら荷物を持ってくれる。
途中。
カリカリカリカリカリカリカリカリ…。
アルのお腹の部分から音が聞こえた。
「ア〜ル〜」
エドが振り返る。
「また猫拾ってきてっ!!」
「だって可哀想だったんだもん」
「元の場所に返してきなさい!!」
「兄さんの人でなし!!」
ガシャガシャと音をならし走り去るアル。
「だから走るな!猫可哀想!!」
……。
何だろうこれは…兄弟漫才?
そんな事はさておき。
「エド……もう少しアルに優しく…」
「ダメだ。動物を飼えないのに拾ってきゃ動物が可哀想だ」
エドの言う事は正論だ。
だからそれ以上言う事はできなかった。
アルとは違うけどそれも優しさだと分かるから。
「あ」
エドが急に荷物を私に押しつけある店の中に入っていく。そして数分後。
「ウィンリィ」
と小さな紙袋を渡された。
「何コレ?」
「いいから持ってけ」
「開けていい?」
「後でな」
「やだ、今見たい」
私は受け取ってすぐ紙袋を開けた。
「……」
エドは何とも不満そうな顔を浮かべていた。
だが……。
「キャラメルナッツのタルトレット」
袋の中には小さなタルトレットが五つ。
「…一応、約束したからな」
「……」
エドはそのまま私の前を歩いて行く。
約束なんていう約束じゃなかったと思う。
あれは単なる会話の流れで……。
律義な奴。
気にしなくたっていいのに。
「エド」
「あ?」
私は振り返ったエドの口にタルトレットを無理矢理押しつけた。
「さすがに一人で五つは無理。だからアンタも食べなさい」
一緒に。
エドは口に押し込まれた分を飲み込むと
「ばっちゃんの分込みだ。お前一人で食う気だったのか?」
「解ってるわよ、そのくらい! ばっちゃんとデンの分引いたって多いって言ってんの!」
「ふーん。まぁ、いいけど」
何か含みのある言い方だが仕方ない。コレ以上はこちらが墓穴を掘りかねない。
エドはタルトレットをかじりながら歩く。
小さなタルトレットをほんの数口で平らげる。
親指で唇を拭う仕草。昔からの癖。
「エド」
「あ?」
「ありがとね、コレ」
「別に……食い過ぎんなよ」
エドは前を見たまま振り返ろうともしない。
太陽に向かうその背中。

遠く
前を見て


駅に着く前にアルが戻って来て、二人に見送られながら私は汽車に乗り込む。
「今度機械鎧壊したらタダじゃおかないから」
「へいへい」
「アルも気をつけてね」
「うん、ウィンリィも元気でね」
汽笛が鳴る。
ゆっくり遠ざかる二人。
別れの言葉も手を振る事もしない。だってまたすぐ機械鎧壊すに決まってるんだから。


流れる景色。
汽車の中で思い出した。
この前エドに会った時、昼ご飯を奢ってもらった。その時デザートにフルーツのタルトレットかキャラメルナッツのタルトレットか悩んで、フルーツを選んだ。今度機会があったらキャラメルの方にしようと言ったのを
「覚えてたんだ…」
律義過ぎるにも程がある。
馬鹿なんだから。

窓の外。
日が草原を黄金色に染めていた。
キャラメルの甘い香。
暖かな春の風。
一面の金色の草原。
眩しさに目を細める。
キラキラと乱反射するそれが
あの金髪を思い出させた。
太陽の光。
キラキラと
黄昏時は寂しく
それでいて輝かしい。
金色の
光。

遠い幻想を見た。

海のように波立つ草原。
黄金色のその海で
三人の子供が遊んでいた。
太陽が沈む刹那。
輝きが増す。
眩しさに目を細める先。
金色の光を背にした

アイツがいた。



日が沈む。
辺りは暗く。私は窓を閉めた。
一日が終わる。
今日も結局、喧嘩して笑って。いつもどおりにおわったな。
汽笛が鳴る。
次の停車駅はリゼンブール。
そうだ、今度アイツが戻って来た時は
シチューを作って
なんとしても普通に牛乳を飲めるようにさせなければ。





皓露からメッセージが届いております

『 あ
 甘い。凹むくらい甘い。
 慣れない事はするもんじゃないね。 』

とんでもございません 素晴らしいです・・・ッ
またエドウィン魂に火が付きました!キャラメル万歳! どうもありがとうございました!